Ⅰ型(即時型)アレルギーはIgE抗体~Ⅳ型(遅延型)アレルギーはTリンパ球
Ⅰ型(即時型)アレルギーとⅣ型(遅延型)アレルギーの解説をしています。例えば、Ⅰ型(即時型)アレルギーはIgE抗体が関与するアレルギー、アトピーはⅠ型のアレルギー疾患、IgE抗体は異物に対する見張り番があげられます。Ⅳ型(遅延型)アレルギーはTリンパ球が関与するアレルギーで抗原を認識する特殊な細胞のことをリンパ球と言います。
~Ⅰ型(即時型)アレルギーとは何か~
IgE抗体が関与するアレルギー
身体に侵入した異物(抗原あるいはアレルゲンという)に対して、身体がそれに対抗する抗体(IgE抗体)を作り出して反応するという現象を抗原抗体反応と呼びます。これは、抗原に対して適切な攻撃であれば、「生体防御」の優れた働きです。しかし、やたらに攻撃してしまい、生体防御の範囲を「逸脱(いつだつ)」してしまったというのがⅠ型アレルギーの正体です。Ⅰ型アレルギーは即時型で、抗原が作用してから15分~12時間くらいの短時間で反応が起こります。アレルギーには、Ⅰ型からⅣ型まで4つの型がありますが、せまい意味で「アレルギー」という場合、多くはⅠ型のアレルギー反応をいいます。
アトピーはⅠ型のアレルギー疾患
アトピーとは、主にⅠ型のアレルギー反応によっておこる疾患を呼びます。抗原による同様の刺激を受けても、アレルギーを起こす人とそうでない人がいるのは、体質の違いです。IgEを体内でどんどん作ってしまう体質の人とあまり作らない体質の人がいるのです。前者をアレルギー体質とかアトピー素因といい、これは遺伝的に受け継いだ体質です。つまりアトピーを定義するなら、「遺伝的にアレルギー体質を受け継ぎ、即時型(Ⅰ型)の反応をおこす疾患」ということになります。
IgE抗体は異物に対する見張り番
IgE抗体は皮膚の下や腸の壁近く、気道などに多く待機しています。つまり、生体にとっては異物となる食べ物や大気などの通る場所を見張っているのです。そして、鼻の粘膜で反応がおこれば、アレルギー性鼻炎、気管支でおこれば喘息、腸の壁でおこれば食物アレルギーという具合に、アレルギー反応のおこる場所によって発症の形態は異なります。でも、同じ仕組みでおこっていることに変わりはありません。
IgEって何?
IgEというのは、免疫(めんえき)グロブリン(Ig)の一種です。免疫グロブリンは、脊椎(せきつい)動物の血清や体液などに存在するタンパク質で、抗原と闘う機能を持っています。アレルギー体質の人の場合、血清中のIgEの数値が高くなります。
~Ⅰ型アレルギー反応の仕方~
①抗原(アレルゲン)が体内に入る
食物アレルゲンは消化器、ハウスダストなど環境アレルゲンは皮膚の毛穴や呼吸器から体内に入る。
②抗体が作られる
抗体の侵入を伝えられた細胞中のBリンパ球が抗体を作る。
③抗体がマスト細胞につく
抗体が化学伝達物質を含むマスト細胞にくっつく。
④抗原抗体反応がおきる
再び侵入したアレルゲンがマスト細胞にくっついた抗体と結合する。
⑤細胞崩壊、アレルギー反応
マスト細胞が壊れてその中のヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどの化学伝達物質が放出される。これらが毛細血管を拡張させるなどしてアレルギー症状をおこす。
~Ⅳ型(遅延型)アレルギーとは?~
Tリンパ球が関与するアレルギー
Ⅰ型アレルギーがIgE抗体によるアレルギーだったのに対し、Ⅳ型アレルギーは細胞の中のTリンパ球がおこすアレルギーです。即時型のⅠ型アレルギーに対し、Ⅳ型アレルギーは遅延型で、抗原(アレルゲン)を体内に取り込んで半日から数日たって反応がおこります。Ⅳ型アレルギーの代表的なものは、接触性皮膚炎です。俗に「化粧品かぶれ」、「うるしかぶれ」などといわれているものです。最近では、金属、ゴム、洗剤などに反応する人も非常に増えています。なかには治療薬に対してもかぶれをおこしてしまうため、なかなか治らないという例もあるようです。
Ⅰ型とⅣ型をあわせ持つ人も
アトピー性皮膚炎はⅠ型アレルギーの代表格ととらえられがちですが、皮膚の組織像を分子レベルでとらえた最近の研究によると、Ⅳ型アレルギーによっておこる側面もあるといわれています。
~「アトピー性皮膚炎とスキンケア保湿」のページを参照~
また、患者さんの実際を見ると、Ⅰ型(即時型)アレルギーとⅣ型(遅延型)アレルギーの傾向をあわせ持つ人も多くなっています。たとえば、卵を食べた直後にじんましんが出て、その後で症状がおさまったころ、半日後にぜんそく発作がおきるというようなぐあいです。このように、アトピーの発症傾向は一定でなく、年ごとに変化していると指摘する臨床医も増えています。
リンパ球って何だろう?
抗原を認識する特殊な細胞のことをリンパ球と言います。リンパ組織や血液中に存在します。リンパ球にはBリンパ球(B細胞)とTリンパ球(T細胞)の二種類があり、Ⅰ型アレルギーの反応に関与するのはBリンパ球のほうです。Bリンパ球は、骨髄で生産され、成熟すると各種の免疫グロブリンを分泌できるようになります。つまり、異物を攻撃する抗体を作り出す働きがあります。Ⅰ型アレルギーの反応にはBリンパ球が重要な役割を果たします。一方、Tリンパ球はⅣ型アレルギーの反応にかかわるもので、異物(抗原)をとり込んだマクロファージからの情報によって活性化され、リンフォカインと総称される様々な物質を放出します。
~Ⅳ型アレルギーの反応のしかた~
①抗原が体内に入る
②マクロファージが抗原をとり込む
③マクロファージがTリンパ球を刺激する
刺激されたTリンパ球はリンフォカインを分泌し、これが炎症をひきおこす。
~アレルギーの用語です~
【マスト細胞】
マスト細胞は、別名「肥満細胞」とも呼ばれ、中に化学伝達物質の入った顆粒を多量に持つ細胞です。IgE抗体がマスト細胞につき、抗原と反応すると、細胞内の顆粒を放出します。そして、顆粒中の化学伝達物質が次の反応をおこし、炎症をおこすことになります。
【化学伝達物質】
細胞と細胞の間でかわされる情報の伝達を担う物質の総称を化学伝達物質(ケミカルメディエーター)といいます。気管支平滑筋(へいかつきん)収縮、血管拡張、血管透過性亢進(こうしん)、粘膜分泌亢進、浮腫(むくみ)など、アレルギー症状をひきおこす張本人が化学伝達物質です。化学伝達物質にはいろいろな種類がありますが、たとえば、ヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどがそうです。
【マクロファージ】
血液中をパトロールしている単球(白血球の一種)が、抗原の侵入をキャッチすると、マクロファージに変身します。そして、その異物を食べてしまいます。そのため、マクロファージは貪食(どんしょく)細胞ともいわれます。
【リンフォカイン】
リンパ球が放出する微量のタンパク質のこと。これが血管内の多核白血球やリンパ球などを呼び寄せ、炎症をおこします。