~4つの型のアレルギー反応~
抗原抗体反応とアレルギー反応とは何か?アトピー性皮膚炎の治療の第一歩は正しい理解からです。そして、アレルギーは抗原抗体反応の一種でアレルギー反応には4つの型があるんですよ。
~治療の第一歩は正しい理解から~
「まず、アレルギーのしくみを理解しよう」と言うと、そういう難しい話はどうでもいいから、予防や治療法について教えてほしいという反応を示す人も多いかもしれません。実際に、アレルギーのしくみを語ると難しい話になってしまうのですが、治療の第一歩は病気を正しく理解することからはじまります。できるだけ、やさしい言葉でわかりやすく説明したいと思いますので、最低限の知識を得るというつもりで読んでいただければと思います。
~アレルギーは抗原(こうげん)抗体(こうたい)反応の一種~
私たちの身体には、身体にとって異物となるもの(抗原またはアレルゲンという)が体内に入ってきたとき、それに対抗する物質(抗体)を作って、抗原を排除しようとするシステムが備わっています。これを抗原抗体反応とか免疫(めんえき)と言います。予防接種などは、このシステムを利用したもので、弱毒化した病原菌を接種することによって、体内に抗体を作り、本当の病原菌が入ってきたときにそれをすみやかに排除して、病気にかからないようにするのです。このように身体にとっては有益な抗原抗体反応ですが、ときに必要以上に作用したり、あるいは不適切に作用することがあります。これがアレルギー反応です。
~アレルギー反応には4つの型がある~
アレルギー反応には、Ⅰ(いち)型、Ⅱ(に)型、Ⅲ(さん)型、Ⅳ(よん)型と4つの型があります。このうち、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、花粉症など一般的なアレルギー疾患は、主にⅠ型とⅣ型にかかわっていますので、この2つの型については「Ⅰ型(即時型)アレルギー、Ⅳ型(遅延型)アレルギー」のページで詳しく説明します。また、最近はこの分類では説明のつかないケースもあります。
~アレルギー反応と種類~
【Ⅰ型】「即時型」「アナフィラキシー型」「IgE依存型」
(反応の起こり方)
アレルゲンの侵入によって多量に作り出されたIgE抗体が、再びアレルゲンが侵入することで反応をおこす。その結果マスト細胞から化学伝達物質が放出されておこる。
(主な疾患・症状)
アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、じんましん、血管浮腫、アレルギー性鼻炎、アナフィラキシーショック、食物アレルギー、花粉症、アスペルギルス症
【Ⅱ型】「細胞障害型」「細胞融解型」
抗原に対して作られた抗体が赤血球、白血球、血小板などを破壊。IgG、IgM、補体活性化。
(主な疾患・症状)
自己免疫性 溶血性貧血、血小板減少症、不適合輸血、重症筋無力症、薬剤アレルギー
【Ⅲ型】「免疫複合体型」「アルサス型」
(反応の起こり方)
抗原と抗体による(免疫複合体)が血中を循環し、腎臓・肺など特定の場所の小血管に付着して炎症をおこすもの。
(主な疾患・症状)
糸球体腎炎、血管炎の一部、血清病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、過敏性肺炎、薬剤アレルギー、アレルギー性気管支炎
【Ⅳ型】「遅延型」「細胞免疫型」「ツベルクリン型」
(反応の起こり方)
抗原がTリンパ球に作用し、リンフォカインが放出されて炎症がおこる。
(主な疾患・症状)
アトピー性皮膚炎、感染アレルギー、臓器移植の拒否反応、アレルギー性接触性皮膚炎、薬剤アレルギー、ウイルス免疫
~アレルギーは治るの?~
免疫やアレルギーに関する身体のしくみは、「ひとたび身体が記憶してしまうと二度と忘れることはない」というのが特徴です。したがって、身体の記憶が消えないという意味では、「アレルギーは治らない」といえます。しかし、アレルギー反応によっておこる諸症状は、抑えたり、コントロールすることができます。接触や皮膚の乾燥、感染によっておこる症状も予防や対処の方法があります。その意味では、「アレルギーは治る」という表現も決して間違ってはいないでしょう。また、一般に「アトピーを治すこれといった方法はまだ見つかっていない」とか「ほんとうの原因はまだわからない」と表現されることが多いようです。でも、その人の身体の反応がどのようにおこっているか、きちんと見極め、どのように対処するか方針を決めることができれば、アトピー性皮膚炎をはじめ、さまざまなアレルギー性疾患の治療は決して「未知のもの」ではないはずです。
ただ、残念なことにアトピー性皮膚炎やアレルギー性疾患は「慢性疾患」の側面が強く、ねばり強く治療に取り組んだり、日常生活に対しても工夫が必要になってきます。治療に際しては、治療薬を長期間連用する可能性が高くなり、それだけ薬による副作用や悪影響の問題にさらされることも多くなっています。これらのことが災いして、問題を複雑にわからなくしているともいえます。
~アレルギーとアトピー、言葉の違いは?~
「子供の頃からアトピーでした」とか「うちの子はアトピーです」と言うようなとき、たいていの場合、アトピーはアトピー性皮膚炎の意味で使われているようです。そして、喘息(ぜんそく)や食物アレルギーはアトピーとは別の重症の病気で、「とりあえず、うちの子はそれじゃなくてよかった」という会話につながっています。しかし、それは正しいとらえ方ではありません。ここで、言葉の定義をしてみましょう。
「アトピー性皮膚炎はアレルギー性疾患の1つ」
アレルギーとは身体の反応を表します。特定のものに対する特定の反応です。これは免疫の仕組みによっておこりますが、免疫の仕組みが働くこと自体は正常な反応ですから、アレルギー性疾患は「逸脱(いつだつ)した反応」と理解するとよいでしょう。アレルギーには四つの型がありますが(上記参照)、アトピーは「Ⅰ型(即時型)のアレルギー反応によっておこる疾患」を主に指します。つまり、アトピー性皮膚炎だけでなく、食物アレルギーやぜんそく、アレルギー性鼻炎なども含めてアトピーとするのです。したがって、多くの内科医や小児科医もそのような前提で、アトピーという言葉をつかって患者に話しているようです。
ところでアトピーという言葉の語源ですが、これはギリシャ語に由来した言葉で、「非定型の」とか「奇妙な」というような意味があります。アレルギーのことがまだよく解明されていなかった時代には、アレルギーといえばアナフィラキシーショック(抗原抗体反応のうちでも命にかかわるほどの激しい全身的な過敏症)のことを指していました。アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、花粉症、ぜんそくなどは、抗原抗体反応らしいとわかっていても当時のアレルギーの概念では説明がつかず、「アトピー」と名付けられました。その後、これらもアレルギーの一種であるとされるようになったのです。
~アレルギー体質ってどんな体質?~
アレルギー体質は「過敏な体質」ということではなく、アレルギー反応をおこすのに条件が整いやすい体質と理解してください。例えば、Ⅰ型アレルギーの場合、IgE抗体というものがアレルギーをひきおこす重要な役割を果たしているのですが(次タイトル参照リンク)、このIgE抗体をたくさん作りやすい体質をアレルギー体質ととらえればよいでしょう。